衛星データ×AIで農地パトロールをDX化—「大判地図を持って炎天下での調査」から解放
広島県江田島市のご紹介
広島県江田島市は、広島県南西部の広島湾に浮かぶ複数の島々から構成され、総面積100.7km²、人口約2万1000人の自治体です。温暖な瀬戸内気候を活かした柑橘類や花、施設野菜(キュウリ・トマト)の栽培が盛んで、近年ではオリーブやレモンの産地化にも取り組んでいます。

導入の背景と課題
江田島市は、島しょ部特有の小規模・傾斜農地が多い地域です。過疎化や高齢化が進み、遊休農地や荒廃する農地が増加しているのが課題だと、江田島市農業委員会事務局の佐山氏は語ります。
農業委員会は、農地法第30条に基づいて毎年「農地利用状況調査」(農地パトロール)を実施しています。
江田島市では、真夏の炎天下でA0サイズの大判地図を持ち歩き、手書きで記録した後にExcel台帳(約5万筆)へ入力するという非効率で過酷な業務であった、と佐山氏は語ります。
高齢化した農業委員・推進委員の身体的な負担や、事務局の事務作業が大きな課題となっていました。
佐山氏:「炎天下で大判地図を抱えて歩き、夜遅くまで入力作業をする状況は限界でした」
導入決定の経緯
佐山氏は、広島県農業会議が開催した説明会で尾道市の活用事例を知り、実際に尾道市を視察することにしました。
農業会議の説明会に参加した時点では「高齢者には操作が難しいのでは」「タブレットの画面が小さいのでは」といった懸念もあったといいます。
しかし、視察を通じて有効性を確認し「帰り道には、すでに『これは導入すべきだ』という結論になっていました」と当時を振り返ります。
予算と費用対効果
江田島市農業委員会は、アクタバの導入予算として「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用することにしました。
導入費用は3年間で総額818万円。そのうち半額を交付金、残り半額を市が負担しています。内訳は、アクタバ利用料、タブレット端末13台の購入費、通信費などです。
一方で、従来方式による3年間の費用は約687万円でした。初期費用は増加するものの、地図の印刷費用や時間外労働による残業代などが削減できるため、約4年でタブレット端末購入費などを回収できると見込みます。
導入効果
アクタバのAI解析により、耕作放棄地の可能性が高い農地のみを調査対象とすることで、調査範囲を効率的に絞り込むことが可能になりました。その結果、従来34人規模で実施していた調査が、各委員に1人1台のタブレット端末を貸与する形式に変わり、調査時間を大幅に短縮できました。さらに、データ入力作業が不要となり、事務局の負担も大きく軽減されました。
「想像以上に高齢の委員の方々がタブレット操作に慣れるのが早く、安心しました。調査時間が短縮され、夜遅くまで事務作業に追われることもなくなりました」と佐山氏は効果を実感しています。

今後の展望
江田島市では、今後アクタバを活用して「江田島市版農地バンク制度」との連携を強化する予定です。農地を借りたい人に情報を公開することで、農地の継承や後継者確保を推進していきます。
佐山氏は「江田島市のような小さな自治体でも、導入の工夫次第で十分に成果を出せます。アクタバについては、一度見積もりを取るだけでも、大きな変化につながるはずです」と呼びかけています。
小規模自治体でも費用を抑えた導入が可能であり、江田島市の取り組みは人口減少や農業離れに直面する地域における再現性の高いDXモデルとして注目されています。