千葉市農業委員会における農地利用状況調査の取り組み—アクタバ導入による業務の変化と現場の実感
農地利用状況調査は、多くの農業委員会が毎年頭を悩ませる業務のひとつです。千葉市農業委員会では、アクタバの導入によってその負担を大きく減らすことに成功。本記事では、導入の経緯から現場の変化まで、担当の坂倉氏へのインタビューをもとにお伝えします。

各自治体の農業委員会が担う農地利用状況調査は、毎年欠かすことのできない業務として実施されており、千葉県千葉市でも同様です。
調査は、農地の利用状況を把握し、適切な農地管理につなげるための重要な取り組みですが、その一方で、調査の準備から現地確認、結果の取りまとめまで、多くの時間と労力を要する業務でもあります。
農地利用状況調査は、農地法で定められた業務であり、千葉市では対象となる農地の筆数も多く、調査そのものが大きな負担となり得る業務です。調査結果は、農地台帳の更新や、その後に実施される利用意向調査など、次の業務にも影響するため、毎年決められた時期までに確実に終える必要があります。
千葉市では、こうした業務を継続する中で、衛星データ解析技術を用いて耕作放棄地を検出する農地パトロールアプリ「アクタバ」を活用し、農地利用状況調査の進め方を見直してきました。
近郊農業を支える千葉市の農地と農業委員会の役割
千葉市は、首都圏に位置する人口約98万人の政令指定都市でありながら、豊富な農業資源を有する地域です。耕地面積は約3,500haあり、水稲や落花生のほか、にんじんやネギ、ほうれん草など、多様な農産物が生産されています。近年では、いちご農家を中心に新規就農者の受け入れにも力を入れています。
一方で千葉市は市域が広く、人口も多い自治体です。都市部と農業地域が混在していることから、農地転用の案件も多く、農地を取り巻く状況は複雑です。
千葉市の農地利用状況調査では、農地利用最適化推進委員(以下「委員」)が担当地域の農地を確認しますが、農地を多く抱えるため、1人あたりが担当する筆数は多く、調査そのものが委員にとって大きな負担となっていました。
「相当な業務量だった」従来の農地利用状況調査
現在はアクタバを用いて農地利用状況調査を実施していますが、アクタバを導入する前は紙を中心とした調査方法が主流でした。
「紙ベースの業務を経験した身としては、アクタバ導入以前の、全て紙で作業する頃の業務量は相当なものだったんだと改めて感じています」
と、坂倉氏は振り返ります。


千葉市では、農地利用状況調査を23地区で実施しています。そのため、23地区分の調査台帳と紙地図を用意する必要がありました。地区ごとに該当する地図や農地台帳をA3用紙で大量に印刷し、ファイルに綴じて準備します。紙の量が多く、ファイル自体も大きくなるため、取り扱いにも手間がかかっていました。
また、調査資料の準備にあたっては、単に地図や台帳を印刷するだけでなく、地区ごとに対象農地を確認し、資料に漏れや誤りがないかを確認する必要もあります。
委員ごとに配布する資料の内容が異なるため、準備段階から確認作業に多くの時間を割いていたといいます。
調査期間をできるだけ長く確保するため、年度が始まるとすぐに調査資料の準備に取りかかる必要があり、農業委員会事務局にとっては年度初めから負荷の高い業務となっていたと言います。
紙資料の回収と手入力による取りまとめ
調査が終わると、委員から大量の紙の資料が返却されます。その後、事務局では調査結果を農地台帳管理システムに反映させるため、紙資料をもとに手入力する作業が必要でした。
「農地台帳を管理するために、紙データを全部手入力していく作業になります。委員さんの判定結果の取りまとめはできる限り早く済ませたいのですが、紙の資料から手入力する作業には時間がかかっていました。」
と、坂倉氏は当時の事務作業の大変さを語ります。
委員から返却される資料には、現地で記入された手書きの判定結果やメモが含まれており、それらを確認しながら入力作業を進める必要がありました。
判定内容に不明点がある場合には、委員に確認を取ることもあり、単純な入力作業だけでは済まない場面もあったといいます。
そのため、入力作業が完了するまでの見通しを立てにくい点も、事務局にとっては課題となっていました。
調査結果の取りまとめが終わらなければ、次の業務に着手することができません。利用状況調査の後には利用意向調査の発出も控えており、取りまとめに時間がかかることは、全体の業務スケジュールにも影響していました。
アクタバ導入による調査方法の変化
こうした背景の中で、千葉市農業委員会では農地利用状況調査にアクタバを導入しました。
慣れたやり方を変えるという側面もあるため、令和6年度は希望する委員のみがアクタバを利用する形でしたが、令和7年度は事務局から「なるべくアクタバで」と依頼したところ、ほとんどの委員がアクタバを使った調査を実施してくれたとのことです。
「使ってみると『意外と簡単だ』という声も聞こえてくるので、お願いしてよかったと感じました。」
と、坂倉氏は導入後の手応えを語ります。
委員がアクタバを利用することで、現地での判定結果がその場でデータとして記録されるようになり、事務局側でも調査の進捗状況を随時把握できるようになりました。
従来は、調査期間が終了し、紙の資料が回収されるまで状況が見えにくかったため、調査の進み具合を確認する手段が限られていましたが、アクタバ導入後はそうした点にも変化が生まれています。
千葉市では、アクタバ上で表示される耕作放棄地率を活用し、以下の条件にあてはまる農地については、令和7年度の現地調査の対象から外す運用としました。
①耕作放棄地率が30%未満で前年度判定が耕地であった農地
②耕作放棄地率が80%以上で前年度判定が再生困難であった農地
この結果、調査対象農地数は全体で約40%削減されています。
事務局業務で約70%削減 —— 数値で見えた成果
アクタバ導入の効果は、委員の負担軽減にとどまりません。事務局業務の面でも、明確な成果が数値として表れていて、調査結果の取りまとめ業務だけでも業務量の削減効果は明白です。
千葉市では23地区で農地利用状況調査を実施しており、紙ベースの場合、1地区あたりの調査結果取りまとめに約4時間の事務作業が発生していました。
そのため、23人 × 4時間 = 92時間 が、従来の事務局業務時間となっていました。
一方で、アクタバを利用した場合の作業時間は1地区につき1時間で済むと言います。
令和7年度はアクタバの利用が広がったことで、
紙ベースで対応した委員:2人 × 4時間 = 8時間
アクタバを利用した委員:21人 × 1時間 = 21時間
となり、合計の取りまとめ業務時間は29時間となりました。
結果として、取りまとめ業務だけでも約70%の労力削減が実現しています。
業務負担の分散も実現できました。従来は、地区ごとの調査が完了し、紙資料が事務局に戻ってきてからでなければ取りまとめ作業に着手することができませんでした。
そのため、調査期間の終了時期に業務負荷が集中してしまう状態でした。
アクタバの導入により、調査の進捗確認が容易になったことから、段階的に作業を進められるようになり、業務負荷は分散させることができ、効率的に作業をすることが可能になりました。
「個人的な話ですが、今年度(令和7年度)は時短勤務のまま業務をこなせているので、『アクタバを使ってよかった』といった気持ちです。」
と、坂倉氏は率直な実感を明かします。
利用状況調査以外でのアクタバ活用とさらなる効率化へ
アクタバは、農地利用状況調査以外の場面でも活用されています。
農地に関する問い合わせがあった際の初動確認として地図を確認したり、農政部の他課が補助金申請時の現地状況を把握する際に利用したりするケースもあります。
委員が現場で撮影した写真をその場で共有できる点も、状況把握に役立っています。坂倉氏は次のようなケースもあると言います。
「例えば、委員さんが『ここは違反転用じゃないか?』と思った時に、アクタバに写真を保存してもらって事務局がすぐに確認する、といったことができます。アクタバがなければ写真を撮った後に端末を市役所に持ってきてもらうとか、慣れないメール等で送ってもらうとか、ひと手間もふた手間もかかっていましたが、アクタバなら調査で使っている画面上で完結できます」
今後、さらなる効率化へ向けたプランもあります。
「農地台帳管理システムとアクタバは別のものなので、アクタバに入力された判定結果を、何らかの方法で農地台帳管理システムに移す必要があります。来年度は、そういったシステム間のデータ連携をスムーズに行えるように、サグリさんと一緒に運用方法の検討を進めています。」
と、坂倉氏は語ります。
千葉市農業委員会の事例は、農地利用状況調査という毎年必ず発生する業務に対して、業務の運用方法を見直すことで、委員と事務局双方の負担を具体的な数値をもって軽減できることを物語ります。
さらに、アクタバの導入は、業務の効率化にとどまらず、調査状況を把握しながらほかの業務につながる農政の基盤づくりにもつながっています。